ザンザス姿
※本気です



SS

花魁ボス×ツナ

◆ケイ様

別にいいというのに毎回通される豪華な部屋。 本来なら綱吉が払えないくらいの花代がかかる彼女は何故かいつもタダでついてくれる。
曰わく「お前が気に入った」そうなのだが。 綱吉とて彼女が嫌いなわけではない。 ただ強引なのが苦手なだけで。 訪れる度に毎回床を用意されるのは、少し、困る。

今日も今日とて座敷の隣の部屋には布団が敷かれ、彼女――ザンザスが早くそちらへ、と促してくる。 さすがに今日は嫌だと言えば、ザンザスは何が不満だ、と詰め寄ってきた。

こめかみに走る傷跡を差し引いても美しい、魅惑的な表情を間近で見、綱吉は少し息をのんだ。 しかしそれに飲まれぬよう、顎をひきしめ拳を握る。 さすがに今日は疲れたのだ。 ここに寄ったのだって来る予定はなかった。 ただ一目、見れたらと思ったのだ。
まあ、そうしたら目敏い彼女に見つかって連れ込まれたのだが。 兎に角今日は無理だ、と何時になく強気で告げると目の下の隈に気づいたのかザンザスは仕方ないな、と呟いた。 ほっとした次の瞬間揺れる視界。 なんだと思う間もなく綱吉の体はザンザスの膝に頭を預ける形で横になっていた。

「ゆっくり休め」

ぶっきらぼうだが、彼女なりの気遣いに綱吉は

「ありがとう」

と呟くと瞳を閉じた。 ゆっくりと髪をすく彼女の指の感触を楽しみながら。



気がついたら布団にくるまっていた。 どうやらザンザスに膝枕をしてもらった後寝てしまったらしい。 少し首を動かせば視界に入ってきた顔に思わず笑みがこぼれる。 どうやら抱きしめて眠ってくれたらしく、俺の頭の下と脇に彼女の腕があった。
女の人に腕枕されるなんて男としてどうかと思うが、彼女の方が大きいし力もあるので何も言えない。
布団の中から腕を出し、ザンザスの眉間に触れる。 いつもはここに刻まれている皺も今は無い。 こんな安心しきった寝顔を見れるのは自分一人の特権かと思うと気分がいい。
そのまま指先を瞼、頬へと移し形をなぞる。 なんだってこんな綺麗な人が自分を気に入ったくれたのかはわからない。
でも、

「好きだよ。ザンザス」

小さく呟きながら今は閉じられた紅い瞳を覆う瞼に口づけを落とした。


誰かに見られるわけでも無いのに、口づけた後真っ赤になった顔を隠すかのように布団に突っ伏した綱吉は、しかし直前で何者かに頬を両手で挟まれかなわなかった。 誰だなんてこの部屋には綱吉ともう一人しかいない。

「っザン……起きて?!」

まさかさっきのも……!と更に真っ赤になる綱吉に、ザンザスは口の端を持ち上げニィっと笑うと徐に綱吉がしたように口づけた。
それにより先ほどの行為を知られていたと理解した綱吉は赤を通り越して真っ青になった。 起きていたという事は聞かれていたていう事で。 恐る恐るザンザスの顔を伺えば今まで見た事のない笑顔で。 ああ、彼女だって普通に笑えるんだ。 と思う間もなく押し倒された。

「オレを煽った責任……勿論取るよな?」

暗に取らねぇわけねぇよな、と言われ綱吉は静かに涙した。 今日はしないって言ったじゃん!

◆道野辺ルイ様

下弦の月の下、遠く離れた座敷から夢うつつのように響く三味線の音。ぐらぐらと揺れる視界。目にも鮮やかな緋布団。髪を撫でる感触。

「あれ…。」

ぼうっとする頭でボンヤリと呟くと頭上から呆れかえったような溜め息が聞こえた。

「XANXUS。」

見上げると馴染みの顔が逆しまに見える。深い紅の瞳が綱吉を静かに見下ろしていた。酒気に侵された頭でそういえばいつもの座敷でXANXUS相手に仕事の愚痴をしこたま漏らして類を見ないほど無茶な飲み方をしたことを思い出す。

「もしかして…潰れた?」

恐る恐る尋ねる。答えは聞くまでもないだろう。

「ごめん…ね?」

色々あって溜まった鬱憤に一杯一杯で彼女の事まで気が回らなかったような気がする。店一番の売れっ子で引く手数多な彼女がただ一人、綱吉だけはと時間を空けてくれたのにも拘わらずだ。途端に申し訳なくなってポツリと零すとひんやり冷えた指先が綱吉の額の髪を払って瞳を緩ませた。

「で?ちょっとはマシになったか?」

そっけないけれど限りない愛情で返された言葉に綱吉の心は穏やかに澄み渡っていく。

「…うん。」

頷くと紅を引いた口角がそっと上がる。

「…ならいい。」
「うん、ありがと。」

額を撫でるその指を捕らえ絡ませ微笑む。夜はまだ、始まったばかり…。

某所にて花魁ボスについて萌え尽きるほどヒートしていた折、ケイさんとルイさんより頂いてしまいましたっっ
強引!だけど時折優しい太夫ザンザス!!!!本当にっ有難うございます!!
一連の流れなのでケイさんとルイさんのSSを一緒に掲載